誰にでも限界はある、、、~内部統制だって同じ~

コラム

人間も働きすぎたり、何かに思い悩んでいたり、周りからのプレッシャーが強すぎるといつか心と身体に限界が来ます。

心と身体のどちらか一方でも壊してしまうと自分自身が幸せな人生は送ることができないし、周りの人も幸せにできません。

少し重た目の書き出しになりましたが、僕自身が心や身体を壊している、もしくは壊しそうという状態ではないのでご安心ください。

これまで内部統制が大事と言い続けてきましたが、今日はその内部統制にも人間と同じで限界がありますよというお話です。

限界を知る必要性

以前のブログで内部統制が適切に運用されると4つの目的が達成されると書きました。

しかし、内部統制には限界があるため、これを整備・運用しておけば絶対に大丈夫というものではありません。

中小企業で内部統制を構築した場合、定期的にチェックしてくれる外部監査人は通常いないため、経営者自らが内部統制の限界を知ることで、どのように内部統制を構築及び運用すればよいかのポイントが見えてきます。

内部統制の限界

内部統制の限界として内部統制に関する基準では次の4つの事項があげられています。

(1) 内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場合がある。
(2) 内部統制は、当初想定していなかった組織内外の環境の変化や非定型的な取引等には、必ずしも対応しない場合がある。
(3) 内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益との比較衡量が求められる。
(4) 経営者が不当な目的の為に内部統制を無視ないし無効ならしめることがある。

担当者の判断の誤り・不注意、共謀による限界

まず初めに担当者の不注意などによりパソコン操作を間違えたり、判断ミスをしてしまう場合が考えられます。

内部統制は、会社内部の人たちによって適切に運用されることで目的が達成される仕組みであるため、担当者が整備されている内部統制の意味合いを十分に理解していなかったり、その実施方法を理解していなかったりした場合には、内部統制が適切に運用されない可能性が発生します。

また、内部統制は、担当者同士の相互牽制を通じて間違いや不正のチェックがされるようになっていますが、社内のある担当者が、同じ社内の別の担当者と共謀して記録を改ざんする場合も考えられます。

さらに、取引先の担当者と共謀して不正を行なえば、内部統制が機能しなくなる可能性はさらに高くなります。

内部統制の意義と運用方法を広く従業員に伝えることは会社として対応することができますが、監視する人を巻き込まれてしまうとなかなか発見は難しいです。

社長が気になる領域については年に1度でも会社外部の視点(顧問税理士でも会計士でも)を入れてチェックする体制を整えるだけでも、不正に対するけん制にはなるかと思います。

組織内外の環境の変化や非定型的な取引

内部統制は、構築した時点での業務フローに基づいて設計されているので、内部統制の構築後にITインフラに大規模な変更が生じた場合や新しい法律が施行されたなどの外部環境に変化が生じた場合、もしくはM&Aや部署間の統廃合など、会社の内部環境に変化が生じた場合には、内部統制が有効に機能しないことがあります。

また、今までは1つの事業しかしていなかった会社が、多角化経営に乗り出した場合、その多角化された分野については十分な内部統制が整備されない可能性が考えられます。

そのような非定型取引などが発生した場合には、十分な知識と経験を有する者を配置するなど、非定形取引が発生する都度、的確に内部統制を整備していけば、特に問題になることはありません。

つまり、内部統制を作ったきりアップデートしないで放っておくのはだめですよということです。

こんなにも技術革新が進んでAIが人にとって代わるといわれているこの時代に5年前の業務のまま、内部統制のままという訳にはいきませんよね。

随時、より最適な形へと進化させていくことが大切だと思います。

効果に比べてコストが極端に上回ってしまう

内部統制の整備と運用を行なうことは大切なことですが、内部統制ばかりにコストを掛けているわけにはいかず、効果とコストを天秤に掛けて経営判断を行なう必要があります。

会社として物を購入する際に、稟議制度を取り入れている会社は多いと思います。

稟議制度も会社にとって重要な判断を下す際に承認を得てから行うという内部統制の一つです。

稟議制度を例にして内部統制の費用対効果について考えてみましょう。

営業に必要な営業車を会社として購入したいという場合に、営業マンが勝手に会社名義で契約して納車を迎えた、、、確実に経営者は大激怒だと思います。(購入が実際にできるかどうかは置いておいてください。)

営業車が必要なのであればその理由や買おうとしている車を選定した過程(見積もりなど)等を稟議書に記載して、営業マン⇒営業部長⇒役員⇒社長といった必要な承認を受けてから購入するという形になると思います。

営業車の購入であればこのような内部統制を整備することは必要だと思いますが、これが切手の購入ではどうでしょうか?

営業がお客様に郵便を出したいと思い84円切手を購入した。

先ほどの営業車と同じく会社のお金で物を購入しているという行為は同じですが、支出の金額が違います。

この切手の購入に際しても、営業⇒営業部長⇒役員⇒社長といった稟議の回付が必要でしょうか?

もちろん無制限に切手を買っていいという訳ではないので、誰宛に何を郵送したのかの把握や領収書の提出等は求めるといった稟議とまではいかないまでも簡単なチェックは必要です。

このように内部統制は費用対効果で整備する内容が会社ごとに異なります。

全てをチェックしたければ切手の購入までも社長の目が通る稟議を上げさせればいいのですが、それでは現場は疲弊しますし、社長もすべてを見ることはできません。

発生する事象の金額や異質性によってチェックの厳しさを変えることが内部統制の費用対効果という話です。

日本の大企業、例えばトヨタの内部統制を中小企業がそのまま持ってきて自社の内部統制として運用しても全く意味のないものとなってしまいます。

個人的にこれが一番重要だと思うので、長くなってしまいました、、、

経営者による不正

最後は会社のトップである経営者による不正は内部統制でも防げないということです。

これは上場企業等の内部統制監査を行う監査人にとって重要な内部統制の限界であって、中小企業の経営者にとって関係のある限界ではないので割愛します。

経営者の皆さんは不正をしないようにしてくださいねとしか言いようがありません。

経営者が自ら不正を働いてしまう時は会社が終わるときだと思っています。

経営者は会社の顔であって会社の全てを表す鏡です。そんな経営者が不正をしているような会社は取引先などからの信頼を得られるはずがありません。

そんなことを考える暇があったら自社の事業を発展させるための秘策を考えましょう!

最後までお読みいただきありがとうございます。