ネットワーク科学とは

コラム

ネットワーク科学は、20世紀末に立ち上がった、比較的新しい学問分野です。そして扱う対象は非常に広範囲にわたります。
ビジネス、伝染病、脳科学、インターネット、生態系……

世の中のあらゆるものは、多様かつ複雑な相互作用によって成り立っています。
こういった要素の「つながり」に着目することで、その構造から人間の行動や社会現象、自然現象を理解しようとする学問が、ネットワーク科学です。 

例えば、鉛筆の芯に使われる「黒鉛」は炭素原子からできていますが、「ダイヤモンド」も同じです。でも見た目は全然違いますよね?
これは部分的(ミクロ)で見ると両者は同じ炭素原子からできていますが、炭素原子同士のつながり方(結合)が決定的に異なるため、全体(マクロ)で見ればまったく性質が異なるものになるためです。

こういう風に、個々の特性ではなく、「つながり」そのものから個々の特性や行動を理解することがネットワーク科学の本質です。

ビジネスへの転用

このネットワーク科学、もちろんビジネスでも応用されています。

最も身近で有名な応用例は、グーグル検索の元祖アルゴリズム「ページランク」です。
他の信頼できるページにリンクが貼られるほど【良いページ】だと判断される仕組みで、引用に基づく学術論文の評価に似ています。この結果、Googleは良い感じで検索結果を返してくれます。

もう少し役に立ちそうな例も見てみましょう。
これが「成功の法則」についてです。

面白い研究があります。

「ある芸術家の、最初の5年間に作品が展示された美術館・ギャラリー」を見れば、その後何十年にもわたって、その人の成功の予測が可能だと突き止めたのです。
なぜでしょう。

それは、アートの世界で成功を決める大きな要因の一つが、「一流の美術館・ギャラリーのネットワークに入れたかどうか」だからです。
それ以外からのキャリアスタートでは、作品の質にかかわらず、一流の美術館での展示を望めません。
一流は一流同士、三流は三流同士でつながっているからです。
実際、三流の美術館からスタートして「成功」をつかんだのは、50万人のアーティストのうち、たった227名でした。厳しい現実です。

もちろん作品の質が良いことは言うまでもなく重要ですが、良い作品を持っていても「ネットワーク外への売り込み」を必死にやっていても成功からは遠のく一方だということです。

さらにもっと厳しい現実もあって、
研究者がたとえノーベル賞が与えられる研究プロジェクトに貢献したとしても、無事ノーベル賞に名前がリストされた者は、後々高名な研究者として名を成していく一方、リストされていない者は研究を継続できず、行方不明になる場合もあるそうです。 

アートやビジネスなどのように、「パフォーマンスが測定できない世界」ではこういったことが事実としてあるのです。

最後に

あなたのビジネスにおいて、成功の鍵とは何でしょうか?
正しい戦場で勝負できているでしょうか。

「成功法則」なんて聞くと、なんだか哲学的で抽象的で、胡散臭さすら感じてしまいますが、こうやって科学的な根拠があるというのは驚きですし、きちんと向き合っていかなければいけない問題ですね。
みなさんにとって何かの参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。 

参考文献:『THE FORMULA』アルバート=ラズロ・バラバシ著