こんな時代だからこそ『1on1』で向き合おう
私が会社員のときに経験した人事制度で、よかったものがあります。
それが「1on1」です。
真新しい考え方ではありませんが、リモートワークが増えつつある昨今の状況下において、
大いに活用できる制度なのではないかと思い、今回はその概要について紹介させていただきたいと思います。
1on1とは
1on1とは、1on1ミーティングとも呼ばれる、ミーティングのことです。
部下と上司の定期的なミーティングです。
人事評価制度の中で、上司と部下の面談を実施している会社は多いと思いますが、こういった一般的な面談と1on1は何が違うのか。
ポイントは3つです。
①部下個人に焦点を当てたものであること
②上司は共感的な姿勢でいること
③管理ではなく支援目的
つまりスタンスとして、
“評価してやろう” ではなく、“寄り添うよ、どこまでも” という姿勢であるという点で、人事評価における面談とは異なります。
よって、この1on1は通常の人事評価の面談とは別枠で実施した方が良いものであると言えます。
この1on1が、現代において必要性が高まっています。
その理由については、労働環境の変化が挙げられます。
子育てをしながら働くママが増え、
介護をしながら働かなければいけない人も増え、
さらにはウィルスにより自宅で働かなければいけない状況にある
というのが現代の労働環境です。
要は、仕事とプライベートの境界があいまいになり、もともと互いに影響し合っていた両者が、より密接に絡んできた
という言い方ができるかもしれません。
もともと、人は失恋をしたら仕事のモチベーションも下がるものです。
プライベートを含む、日常の心理状態が仕事のパフォーマンスにも大きく影響します。
会社としては、大きく波があるが、たまにスゴイ成果を出す人より、安定的に適度な水準のパフォーマンスを見せてくれる人を必要としています。
よって、多少手間がかかったとしても、従業員の心を安定に保つために、必要であればプライベートな悩みも含め支えてあげる方が、
結果として自社にとってプラスだと考える会社が増え、そのための手段のひとつとしてこの1on1が候補に挙がるのだと思います。
メリット
1on1の具体的なメリットは以下の3点です。
信頼関係構築が生まれる
今、職場のコミュニケーションが希薄化しています。
業種や職種によっては、業務自体はテレワークでも全く問題なく進むということが判明しました。
しかし、モニター越しでは相手が何を考えているのか、その真意を察することは難しく、
メールなどのテキストで思いを正確に伝えるのはさらに難易度が高まります。
こういう状況下で、1on1によるリアルな場でのミーティングは、上司と部下の信頼関係を築くのに役立つでしょう。
パフォーマンス向上
1on1は部下が主役です。
評価の場ではないので、上司は部下の話をとことん聴きます。いわゆる傾聴です。
人は遮られずに話を聞いてもらうことで、自己効力感が増します。
そして不満が減り、心が安定することで、結果的に仕事のパフォーマンスも上がります。
また、広い意味では離職を防ぐのにも効果があると言われています。
人事評価時のギャップを解消
人事評価の面談と1on1は別で実施するものであると説明しました。
人事評価の面談は、多いところで四半期に一度くらいの頻度で、年に1度だけという会社も多いと思います。
ここで “あるある” なのが、1年間頑張ってやってきて高い評価を期待していたら、年に一度の面談でひどい評価を受け、その落差に戸惑うというもの。
一方の1on1ミーティングは、多い会社であれば週に1回やっているところもあるそうです。
一定の頻度でミーティングを実施していると、定期的に目標のモニタリングや進むべき方向性の軌道修正ができるので、
最終的に1年間の人事評価がなされたときも、概ね想定内の結果となり、不用意に傷つくことを防ぐことができます。
テーマ
1on1でどんなことを話せばよいか。
一番良いのは、部下自身がテーマを決めることです。
主役は部下ですので、部下がそのときに話したいこと、気になっていることをテーマにすれば良いと思います。
ただ、いきなりテーマを決めて話せといわれても難しい場合もありますので、いくつかテーマを決めるポイントをご紹介します。
まず、上司と部下の信頼関係を構築することが大事なので、
全然仕事とは関係のない、心身の健康状態や、モチベーションについての話をすると良いでしょう。
このとき、上司も自己開示を行ったり、部下の良い面を褒めたりすると、部下が話しやすくなります。
また、部下の成長を支援するために、業務における課題や悩みを整理したり、目標設定を一緒に行ったりすることも有用です。
このとき、上司が答えを教えるのではなく、部下自身が答えを見つけるのを手助けするよう心がけてみてください。
最後に、会社の方針や戦略といった、抽象的で、部下からすると少し遠いように感じるテーマについて、
上司が噛み砕いて説明してあげるということも有用だと考えられます。
まとめ・留意点
くどいようですが、1on1は部下が主役です。
といっても、会社のため、ひいては上司自身のために、部下を成長させることが本当の目的です。
上司が聞きたいことや言いたいことはグッと我慢して、聞き役に徹してください。
部下に、「これは自分の時間だ」と思ってもらえたら成功です。
そのために、話しやすい環境を作ることも重要です。
ミーティングを行うための場所(大きさ、照明など)や話を聞く表情、相槌、向きや姿勢など、
細かいかもしれませんが、大事なことだと思います。
そして、部下から聞いた内容を、部下の成長という観点でポジティブにフィードバックできれば最高です。
同じ経験をしても、そこから10を学ぶ人もいれば1しか学べない人もいます。
上司には、部下の経験を学習に変換して、気づきを与え、成長を促すことが求められています。
リモートの環境でこれを行うのはかなり難易度が高いと思いますが、1on1の考え方が少しでも参考になればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。