資金繰り ~苦しい時期を乗り越えるために~

コラム

少し前であればリーマンショック、ここ最近であれば新型コロナウイルスの感染拡大により経済は大きなダメージを受けています。

これらの影響を受けて売上が大きく下落した会社も少なくないかと思います。

大きな不況が訪れたときに、かなり大幅に売上が下落して、大赤字になっているが倒産しない会社と、

それほど売上の減少は大きくなく、若干の赤字くらいに落ち着いているにも関わらず倒産してしまう会社とがあります。

この両者の差はいったい何でしょうか?

今日はその差の要因となる資金繰りについて見ていきたいと思います。

資金繰りとは

資金繰りを考えるときに使う資金とは、現金や当座預金などの会社が持っている今すぐに支払いに使用できるものを言います。

つまり、資金繰りとは会社の収入と支出を管理して、収入が多ければ来月の支払いに回し、

支出が多ければどこかから資金を調達してくるというような収支の過不足を調整することを言います。

黒字倒産が起こる理由

なぜ利益が出ているのに会社が倒産してしまうのか?

それは「利益=資金」であるという勘違いが一つの要因であると考えられます。

うちは利益が出ているから大丈夫だろうと考える経営者もおられるかと思います。

しかし会社が利益を上げて儲かっていても資金が不足しているという状態は十分にあり得ます。

例えば10月に商品を納品して、翌月の11月の上旬に代金を12月末期限で振り込んでもらうような請求書を発行したとします。

そうすると会計上は10月に売上が計上され、利益が計上されることとなりますが、

この売上が資金になる、つまり現金が振り込まれるのは12月末ですので、約2か月間利益は出ているが資金がないという状態になります。

設備投資をした場合も同様で、10月に設備を導入した費用として業者に1,000万円支払った場合、

資金は10月に1,000万円減少しますが、この設備を取得したことに関する費用(減価償却費)は、

会計上この先数年にわたって分割して計上されることとなるため、会計上の利益と資金が一致しないこととなります。

資金繰りを改善する方法

資金繰りをよくするにはどうすればいいのか。

一番の近道は会社の業績を改善していくことですが、何よりも大切なのは今現在、手元にある資金はいくらなのか?を知ることです。

来月の自分の会社の資金繰りがどうなっているのか、いくら入ってきていくら出ていくのかを知らない経営者の方は多いかと思います。

まずは現状の資金を把握し、数か月先の資金状況についての予測を立てて将来の資金計画を立てることが必要です。

そのために「資金繰り表」を作ってみるのもいいかもしれません。

また、直近の資金について改善するのであれば、貸借対照表の資産項目として載ってはいるが、

事業活動の役に立っていないものを処分することも一時的な資金を改善することには効果的です。

例えば、全く活用していないが保有している土地や投資をしようと思い立ったときに買ったっきりの有価証券を売却することや

売れずに大量に抱えてしまっている在庫を処分セールなどで安くても売却することで一時的な資金は増加します。

資金繰り表の作り方

資金繰り表に決まったフォーマットはありませんので、会社に応じて自由に作って問題ないです。

ただ、最低限「経常収支」「経常外収支」の2つに区分することが重要です。

経常収支と経常外収支

経常収支とは、営業活動のために必要となる支出や、営業活動によって生み出された収入のことを指します。

例えば、商品を販売して得られた売上や現金仕入れ、人件費の支払いは経常収支に含まれます。

それに対して経常外収支とは、営業活動以外で生じた収入と支出のことを指します。

例えば、借入金の返済や設備投資に係る支出などは、毎期発生する経常的な活動とはいえないため、経常外収支に該当します。

その他にも、補助金や助成金など特殊要因による収入も経常外収支に含まれます。

経常収支の黒字化

資金繰りの状態を把握するためには、経常外収支ではなく経常収支に注目することが大切です。

なぜかというと経常外収支は一過性の変動しか示していないためです。

例えば、経常外収支である借入金は、借り入れた時点ではプラス、つまり収入となります。

しかし、当然ながら借入金はいつか返済しなければいけません。

借入金は一時的に資金を増やすことにつながりますが、根本的に資金繰りが改善したことにはなりません。

それに対して、経常収支は本業である営業活動によって変動する収支であるため、継続的な会社の資金繰り状態を表すものだといえます。

つまり、資金繰り状態を改善するためには、経常収支の黒字化を目指すような対策を考えることが大切です。

まとめ

今回のコロナの影響でコロナ融資が出てきたときに、売上が下がっているので

何となく安心だから借りておこうと判断した経営者の方も多いかと思います。

不測の事態が今後も予想されるので、念のための借入も大切です。

しかし、上述したように借入金はいつか返さないといけない資金です。

日ごろから資金繰りについて把握している経営者の方であれば、コロナによる売上減少が

資金繰りにどう影響を及ぼして、数か月後の将来を考えたときに資金が足りるのか足りないのかを把握しているため、

必要な分の借入を行うことができ、返済についてもめどをつけることができます。

資金繰りは将来に関することなので確実なものを作ることはできませんが、

日々作成した資金繰り表と実績とを照らし合わせてずれの要因を把握し続けることで、精度の高い資金繰り表が作れるようになります。

自分の会社の資金繰りをきちんと把握して、黒字倒産といったことが発生しないように経営をすることが大切です。

最後までお読みいただきありがとうございます。