とある炎上事件から学ぶ株式の話

コラム

会社法という法律があるのをご存知でしょうか?
普通に生活していたら、あまり関わることはないですよね。
ですが、会社経営をする上では非常に大事な法律でして、これを意識しておかないと、”いざ”という時に困ります。
今回はそんな”いざ”という時のお話しです。
最近話題になったニュースを題材に、「株式会社」、「株式」というものについて法律的な面から掘り下げていきたいと思います。

さて、今回は取りげるのはコチラです。
YouTubeを見てらっしゃる方は、非常に話題になったのでご存知のことと思いますが、元レペゼン地球のDJ社長が配信した動画です。
 2021年6月9日現在、当事者同士は裁判中とのことですが、ここでは裁判の内容については触れませんし、どちらが良い悪いなどの意見はしません。
この記事では、仕事に役立てるための題材として、あくまで法律的な観点から考察し、今後同じような事態にならないためにはどうすればよいのか、という点について解説していきたいと思います。
概要
まず、動画の内容を簡単におさらいします。
およそ7年前、DJ社長は起業に失敗して、約6,000万円の借金を背負っていました。
しかし、”音楽で成功してやる”という大きな夢がありました。
そこで手を差し伸べたのがHさんで、彼が100万円を出資して会社を作ってくれました。
そして、
「この立替えた100万円は、君が成功して借金を全て返し終えたら100万円ちょっとで買い取ってよ」
という風に約束したそうです。
その後、DJ社長率いるレペゼン地球は大成功をおさめ、無事借金も完済しました。
そこで、”さあ当初の約束を”ということで、株を返してもらおうと思ったら返してもらえない。
さんざん揉めた挙句、DJ社長は、それまでに生み出した利益も、楽曲も、「レペゼン地球」という名前すらも手にできないまま、会社を追い出された。
非常に簡単に書きましたが、ざっくり言うとこのような内容です。
さて、それでは本題ですが、
なぜDJ社長は株を返してもらえなかったのでしょうか?なぜ楽曲の権利も手放すことになったのでしょうか?
それはHさんが株式を過半数持つことで会社の経営権を握っていたからです。
株式とは?
レペゼン地球が所属し、DJ社長が代表取締役を務めていたのは、「Life Group株式会社」という会社です。
この”株式会社”というものは、「株式」を発行していることが特徴ですが、株式には以下のふたつの目的があります。
①  資金調達
②  議決権(意思決定)
一つ目は、会社がお金を集めること。つまり、株式を買ってもらうことで、会社にお金を入れることができます。
今回の事例に当てはめると、
当初、「HさんがDJ社長に100万円出してあげた」というのは、厳密に言うと、「Life Groupという会社の株式を100万円で売った」ということになります。
そして二つ目は、この株式というものを持つことは、会社の決定権を持つことだということです。
会社の経営に口が出せるのです。
言い換えると、ある一定数の株式を持っている人は、会社がやることにダメ!といって反対することができます。
そしてその権利は、株式をどれだけ持っているかという割合(持ち株比率)によって異なります。


▼持ち株比率ごとの株主の権利▼

細かい部分は参考までに見ていただければ良いのですが、大事なのは下半分です。
会社の経営方針の決定は、株主総会の普通決議や特別決議など、いわゆる多数決で決めていくことになりますが、
表にもある通り、だいだいのことは「普通決議」で過半数をもって決めることができます
社長をクビにもできます。
よって、株式を半分超持っている人が実質会社の経営権を持っていると言えます。
今回の事例に戻ると、
Hさんが当初100万円でLife Groupの株式を買ったとき、持ち株比率が51%になるように買っていたのです。
そうすると、会社の決め事はほとんどHさんが決めちゃえますし、会社の事務もHさんがほぼ全て担当していたそうなので、簡単に言えば、もう好き放題できてしまいます。
(実際にどうだったかはわかりませんが)
そして当然、役員をクビにする権限も持っている訳ですから、揉めてしまったDJ社長を解任できたという訳ですね。
 株式を半分超渡してしまったこと
これが今回の事件を生んだ最大の原因です。
揉めるシチュエーションという訳で、株式会社にとって持ち株比率というのは非常に重要です。
そしてこの他にも、株式が原因で揉めるケースがあるので、代表的なものを少し紹介したいと思います。


 共同経営
Hさんが持っていた51%という持ち株比率ですが、これは実務では本当によく見かけます。
これは逆に言うと、誰かが決定権を持った状態にしていということの現れです。
ベンチャー企業などを創業するときによくあるのですが、仲間と起業することが多いと思います。
AppleやGoogleもそうですよね。
このとき、「株式は仲良く半分ずつね」という風にしてしまうとだいたい揉めます。
よほど信頼関係があれば別ですが、
割と知り合って間もない有能な二人が、お互いの能力を補完する形で共同創業した場合なんかは、将来的に揉めるケースが多いので、注意が必要です。
ちなみに、共同経営については持ち株比率以外にも、僕たちの動画「KUMAチャンネル」で語っていますいのでぜひご覧ください。


相続
続いて問題になりやすいのが相続です。共同経営とよく似た、補足的な論点です。
例えば家族経営を行っているような会社で、創業者であるお父さんから、息子兄弟に株式を譲る(相続する)ケースはよくあります。
このとき、うっかり半分ずつにしてしまいがちなのですが、なるべく避けた方が良いです。
たとえそのときは兄弟の仲が良くて、イイ感じに経営ができていたとしても、この株式は今度それぞれの子どもに引き継がれていきます。
想像してください。
従弟/従妹と半分ずつ株式をもって、共同で会社経営ってできますか?
ちょっと気まずいですよね?
ということで、相続においても、この持ち株比率というものは意識しておいた方が良いです。


まとめ
会社を初めて作るときには、会社法なんて知らずに始めることの方が多いです。
持ち株比率も、平等に分けた方が良い気もするし、ちょっと詳しそうな人にそれらしいことを言われたら信じてしまいがちですよね。
ただ、始まりこそ注意しないといけません。特に誰かと会社を始めるときは要注意です。
今回の事例に関しても、YouTubeのDJ社長の訴えを聞いていると可哀そうに思うし、応援したいなとも思いますが、
そういった感情と、法律上どちらが正しいかは別問題です。
いずれにせよ、これからの活動を応援したいなと思いますね。
みなさんも十分ご注意ください。
今回の記事が何かの役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。