マクレランドの欲求理論で考える人事戦略
どうすれば従業員がモチベーションを高く保って仕事にあたってくれるのか?
従業員の離職が年々加速しているのはなぜだろうか?
人事関係での悩みは尽きないかと思います。
モチベーション理論については以前ブログで『X理論Y理論』についてご紹介しました。
今日はまた別の『マクレランドの欲求理論』というモチベーション理論をご紹介したいと思います。
マクレランドの欲求理論って何?
マクレランドの欲求理論は、かの有名なハーバード大学の心理学教授を務めていたデイビッド・C・マクレランド氏が提唱した理論です。
マクレランドは、人が行動を起こす際に見られる動機を4つに分類し、程度の差はあったとしても、必ずこれらの動機によって人が動かされていると主張しました。
さらにマクレランドは、その動機タイプに応じて、リーダーシップの取り方も提唱することで、極めて実践的な理論を提供した研究者です。
それでは4つに分類された動機の内容を順番に見ていきたいと思います。
達成動機
何かを成し遂げたことによりもらえる報酬(お金など)よりも、何かを成し遂げることによる達成感や、
より自分が成果を残したいという向上心を求める欲求を指します。
この達成動機が強い人は、自分自身の個人的な進捗に関心が強く、何事においても自分の手で行うことを好みます。
また、自分がやったことに関する結果について、迅速なフィードバックを求める傾向があることも特徴です。
こういった達成動機の強い人に対して管理者は、本人のスキルや成果状況が向上していることを意識させることが、モチベーションを向上させるために大切です。
達成動機が高い人は、業績に対する意識が高い人が多いため、結果が数字として分かりやすく出る営業職に向いていると言われます。
権力動機
部下や同僚などの他の人に影響力を及ぼし、コントロールしたいという欲求のことを言います。
この権力動機が強い人は、激しい競争を受け入れ、責任を伴う仕事を好み、地位や身分が重視される状況を求める人が多い傾向にあります。
地位や名誉が欲しいというタイプの人ですね。
また、このタイプの人は他の人から指示されることを嫌い、
自分自身が影響力やパワーを行使することに積極的になるタイプです。
こうした人にはチームのリーダー的ポジションを任せて、企画等に積極的に携わるような職務を与えることで、
働く意欲を向上させることが可能になります。
権力動機が高い人は、部下のコントロールに長けている人が多いため、部下を管理するマネージャー職に向いていると言われます。(権力とついていますが暴君という意味ではありません)
親和動機
周囲の人と友好的な関係を構築したいと願う欲求のことを言います。
この傾向が強い人は、他の人から好かれたい、信頼を得たいという願望があり、人の役に立てるように努力する特性があります。
しかし、心理的に緊張するような場面では一人では耐えられなくなるという弱点も持っています。
自分がリーダーになることを望むタイプではないため、チームの中でサポート役として従事させ、
複数の作業を並行してこなしてもらうことが効果的です。黒子役がぴったりのタイプですね。
親和動機が高い人は、社交性が高い人が多いため、チームの構築や来客応対といった対人業務に向いていると言われます。
回避動機
これは失敗や困難な業務から逃げようとする気持ちの事で、こうした感情が強い人は、
成果として掲げるべき目標を避けてしまったり、自分から率先して行動するというよりは、周囲に合わせる傾向が強く見られます。
この動機が強い人は、チームの一員としては足を引っ張りかねない存在ではありますが、
将来的にそうした部分を克服させることを目標として、なぜそのような選択をしているのかの要因を洗い出すなど、
周囲から十分なサポートを行う必要があります。
回避動機が高い人は、受動性が高くトラブル回避能力に長けている人が多いため、安定したルーティン業務の多い事務職に向いていると言われます。
まとめ
人の行動を4つに分けるマクレランドの欲求理論はとても分かりやすいものなのですが、
全ての人がきれいにこの4つの分類で区分できるわけではありません。
例えば会社で社長などのお偉いさん方相手にプレゼンをする機会があったとすると、
上手くやって成果を残したいと思う達成動機と、できることなら逃げ出したいという回避動機の
自分の中の天使と悪魔がささやいているような気持ちを抱くのが人間というものです。
実際の会社内ではその人のその場での立場や状況によって4つの動機が複雑に絡み合ってその人の行動に影響を及ぼします。
マクレランドの欲求理論がモチベーション理論の重要な理論の一つと言われているのは、特定の行動をさせる意欲を引き出すためには、心の内にある内発的動機を刺激することが重要 であることを示したことと言われています。
管理をする立場の人は部下がどのような性質を持っている人なのか(どの動機が強いのか)を把握して
その人その人にあった導き方をする必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。