【事業承継】3つの方法とその特徴
経済産業省の調査によると、中小企業の経営者の最も多い年齢層は65~69歳であり、平均年齢はなんと75歳と言われています。(2015年現在)
そして、その半分以上が後継者未定だそうです。
実際に、廃業の件数も2016年には30,000件に上り、まさに大廃業時代が到来しようとしています。
事業承継の追い風
このような状況ですので、国としてもこのまま大廃業時代が訪れて、日本経済がダメージを受けては困ります。
そこで事業承継に関して、税制優遇措置を始め様々な支援策を打ち出しています。
事業承継税制や事業承継補助金などがその一例です。
事業者としては、このような制度をうまく利用して、このタイミングで事業承継をしっかり進めていくことが大切です。
“進めていく” と表現したのは、後ほど少し触れますが、事業承継には時間がかかるからです。
事前準備→承継期間→承継後のフォローまで考えると、数十年単位でのイベントであると言っても過言ではありません。
特に事前準備については、早い目に検討するに越したことはありません。
そこで今回は、まず入門編として事業承継にはどんな方法・選択肢があるのかをまとめてみたいと思います。
政府の支援内容の詳細や具体的な進め方については、この後の記事で順番に紹介していきますね。
承継方法の選択肢
事業承継というと、娘や息子に会社を継いでもらうというイメージが強いと思いますが、この他にも選択肢があります。
まず、事業承継は大きく「親族内承継」と「親族外承継」に分けられます。
このうち親族外承継については、さらに「従業員等」への承継と、「M&A」を行うという二つの選択肢に分かれます。
よって、「廃業」という選択肢を除いた場合、一般的な事業承継の選択肢としては、①親族への承継 ②従業員等への承継 ③M&Aによる承継 の3つに集約されます。
実際に事業承継を考える場合も、この順に承継を検討していくことになります。
それでは、それぞれの選択肢について、特徴を見ていきたいと思います。
親族内承継
これがいわゆる “子どもたちに継ぐ” という、最もポピュラーな選択肢です。
以下のような特徴があります。
【メリット】
・従業員・取引先・銀行など、利害関係者の理解が得やすい
・事前に後継者が決まって入れば、長期的な戦略や計画をたてることが可能
・株式の移転がスムーズ(相続や贈与に関して、国の制度も後押ししてくれている)
【デメリット】
・子どもが適切な素質・能力を持っているとは限らない(従業員が嫌がって辞めてしまうかもしれない)
・候補となる子どもが複数いる場合には、親族内でもめる可能性がある
事業承継には「会社の株を引き取る」という行為も含まれていますが、タダで譲ってしまった場合には贈与税がかかりますし、買い取る場合には多額の資金が必要になります。
いずれにせよ、受け取る側(承継する側)にはある程度の負担が必要になってくるのですが、親族の場合は、こういった贈与などに関して税制の優遇があるのが大きなメリットではないでしょうか。
親族外承継(従業員等)
こちらは、親族外の外部ではなるものの、従業員や取引先など、会社を良く知る人への承継を指します。
以下のような特徴があります。
【メリット】
・親族と同様に、長期的なスパンで承継を進めることができる
・業務に精通している(もともと経営者の右腕だった従業員や、長年一緒に仕事をしてきた取引先など)
【デメリット】
・受け入れられるかが問題(従業員内で下克上が起こったときの反発や、突然外部の人がトップとしてやってくることに対する抵抗など)
・株式購入資金(所有と経営を分ける可能性もあるが、それで納得感があるか)
・連帯保証を嫌がる可能性が高い
従業員に継ぐのか、取引先に継ぐのかで特徴は少し変わってくるのですが、ともに共通するのは最後の「連帯保証」の問題です。
従来、オーナー企業への銀行貸付には経営者の保証を求められるケースがほとんどでした。
現在は、「経営者保証に関するガイドライン」により、やみくもに保証を求めないような傾向にはあるのですが、
これも業績が安定しているなど、いつでも認められるものではありません。
こうした場合に、後継者が連帯保証を嫌なのを理由に承継を断るケースが多いのは事実です。
これは親族内の承継においても同様の課題と言えます。
ただし、事前にきっちりと磨き上げを行うことによって、経営者保証を外すなどの対応行うことは可能です。
親族外承継(M&A)
最後はM&Aを行う、つまり外部の会社または個人に、会社や事業を売却することです。
以下のような特徴があります。
【メリット】
・幅広く後継者を探すことが可能(マッチングサイトなども増えてきている)
・現経営者は、売却によりまとまった資金を手にすることができる
【デメリット】
・マッチングが難しい(経営者が思った金額と違う、従業員の雇用継続など諸々の条件交渉が必要など)
・買収後の統合作業(PMI)が難しい
従来はM&Aと聞くと、いわゆる “身売り” のような印象があったため、抵抗感を示す経営者も多かったと思いますが、今ではその感覚もだいぶ薄れているように感じます。
身内や取引先などに後継者がいない場合、廃業を選択してしまうケースもあると思いますが、廃業した場合には、その手続の過程で諸々の支出が発生し、結果的には今までせっかく一生懸命頑張ってきたのに、自己資金を持ち出して会社を閉めないといけないこともあり得ます。
この点、M&Aの場合には、無事上手くいけば買収資金としてまとまった資金が経営者に入ってくるので、退職金のような形で引退後に安心して暮らせます。
まとめ
ここではざっくりとその選択肢について記載しました。
従来、オーナー企業の事業承継といえば親族内承継がそのほとんどを占めていました。
1990年代以前は、90%以上であったと言われています。
しかし、現在ではその割合は過半数を下回っており、親族だけでなく、従業員や取引先、M&Aなど、さまざまな手段で事業承継が行われるようになってきました。
事業承継は外部の専門家やコンサルに入ってもらうケースも多いですが、件数が増えるとサポートする側のノウハウもたまり、さらに良いサービスを受けることができるという好循環になります。
ただし、事業承継は準備に時間がかかります。
いざしようと思っても、取りたい手段によって事前準備がかなり違ってきますので、相談だけでも早いうちにしておくことをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。