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フリーランスの『労災』はどうなる? 特別加入の対象が拡大か

一人でも労働者を雇用する事業主は、業種や規模にかかわらず、労災保険に加入する必要があります。
労災保険は正式名称を『労働者災害補償保険』といい、業務上の事由や通勤中に起きたケガや病気、死亡などに対して、給付などの補償が行われます。
この労災保険は原則として労働者を保護するものですが、一部の事業主やフリーランスとして働く個人事業主は特別加入制度により、任意での加入が認められていました。
この特別加入制度の対象の範囲が大幅に拡大する可能性があります。
労災の現状と今後の見通しについて、考えていきます。

労働者かフリーランスかは労働者性で判断

労災保険は労働者を使用する事業を適用事業とし、補償の対象となるのは、正社員や契約社員、パートやアルバイトなど、職種や雇用形態を問わず、すべての労働者と定められています。
労災保険は、労働者災害補償保険法に基づく公的保険で、原則的には雇用されている労働者を保護するための制度です。
したがって、事業または事務所に使用されておらず、労働者ではない事業主や会社役員などは、労災保険による補償の対象にはなりません。

また、事業者と「業務委託」や「業務請負」などの契約を結んで働くフリーランスなども、労災保険の対象外になります。
特定の業務に対して事業者側から報酬を受け取る業務委託契約や業務請負契約は、雇用契約ではないため、業務中にケガや病気をしても補償を受けることはできません。

しかし、2023年11月、ネット通販大手『アマゾン』の配達業務に就いていたフリーランスの運転手が配達中に負ったケガに対し、管轄の労働基準監督署は『労災』を認定しました。
運転手はアマゾンの配送を取り扱う運送会社と業務委託契約を結んでいたフリーランスであるにもかかわらず、労基署が労働者とみなしたことになります。

労働基準法では、労働者に該当するか否かの判断基準を『労働者性』といい、たとえ形式上は業務委託契約であったとしても、労働者性があれば労働者と認められる場合があります。
そして、この労働者性を見極める主なポイントは、他人の指揮監督下にあるかどうかと、指揮監督下における労働の対価として報酬が支払われているかどうかの二つになります(使用従属性)。
たとえば、フリーランスであっても勤務場所や勤務時間が拘束されていたり、業務の拒否権がなかったりすると、指揮監督下にあるとされ、労働者性が高いことになります。
この使用従属性については、明確な基準に基づき画一的に判断されるわけではなく、個々の事案ごとに総合的に判断される点に注意が必要です。

先の運転手は、アマゾンと運送会社にアプリを通じて配達先や労働時間が管理されており、両社の指揮監督下にあると判断されました。
つまり、独立したフリーランスでありながら、実質的に雇用された労働者と同等の働き方になっていたことから、労災が認められたことになります。

すべてのフリーランス対象の特別加入制度

フリーランスである運転手の労災が認められた一件は、同様の働き方を行うフリーランスの保護につながるという見方があります。
フリーランスとは、自身で事業等を営んでいる特定受託業務従事者で、従業員を雇用しておらず、実店舗を持たない人のことを指します。

多様な働き方が重んじられる現代において、さらにコロナ禍を経たことにより、フリーランスとして働く人の数は飛躍的に増えています。
そのようななか、同じ企業から継続的に業務の委託を受けるなど、労働者に近い働き方をしているフリーランスも多いのが現状です。
厚生労働省ではこうした現状をふまえ、これまで一部のフリーランスしか加入することができなかった『特別加入制度』の対象範囲の拡大・運用を検討しています

特別加入制度とは、その業務の実情や災害の発生状況などから、労働者ではなくても、労働者に準じて保護する必要がある中小事業主や一人親方、特定作業従事者、海外派遣者、一部の個人事業主の加入を認める制度のことです。
これまで何度か特別加入の対象の拡大が行われており、2021年にはフリーランスでもITフリーランスや自転車を使用して貨物運送事業を行う者、芸能関係作業従事者など、一部の業種で特別加入が認められました。

内閣府の調査によると、現在のフリーランスの数は本業と副業を合わせて約462万人という試算が出ています。
特別加入制度の範囲が拡大されることで、これらすべてのフリーランスにとって新たなセーフティーネットができることになります。
具体的にどのような制度になるのかなど、フリーランスは今後の行方を注視していく必要があります。

※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。

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