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有期労働契約にまつわる基準とは? 雇い止めが無効になるケースも

労働者の解雇は、労働基準法では少なくとも30日前の予告、または30日分以上の平均賃金の支払いが義務づけられています。
しかし、労働契約法では客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要件となっているため、現実的には厳しい制限だといえます。
したがって、会社側が安易に一方的に解雇を行うことはできません。
解雇とは異なりますが、同じく退職のひとつとして有期労働者の雇い止めがあります。
今回は、有期労働契約の基準と、雇い止めについて解説します。

雇い止めを行う際の注意点

新型コロナをきっかけとする景気の悪化で、多くの人が、解雇や雇い止めにより仕事を失っていることが、たびたびニュースになっています。
企業でも、業績悪化や経営困難などによって、人件費を削減するため、やむを得ず雇い止めを行うことがあるでしょう。
しかし、雇止めは、条件によって無効になる場合もあるため、注意が必要です。

雇い止めとは、有期労働契約の期間が満了になったことで、会社側が従業員の雇用期間を更新せずに契約を終了させることをいいます。
つまり、当初設定していた契約期間が満了したことによる終了であり、そこから契約を更新するかしないかは、原則的に会社側の判断に委ねられているのです。

ちなみに、派遣社員の場合、派遣先とは労働契約を結んでいないため派遣の終了に関しては雇い止めになりません。
しかし、派遣元の会社との間には有期労働契約があるため、期間満了により契約更新をしてもらえなければ、雇い止めに当たります。

有期雇用契約の更新については、原則的に雇用者側が決めることができます。
しかし、過去の判例では、従業員との契約の形式が有期労働契約だったとしても

●実質的に正社員である無期契約労働者と変わらない状態である
●契約時の経緯などから雇用継続の合理的な期待が持てる状況である

といった場合、雇い止めが無効になったケースが存在しています。

たとえば、有期契約労働者に正社員と同じ業務を任せている場合などは、雇い止めは実質的に解雇に相当する、と解釈されます。
また、複数回、契約を更新していれば、労働者側が「次も更新される」と期待を持つのは当然といえ、現状をベースに判断した場合、雇い止めが無効になる可能性があるのです。

さらに、厚生労働省が定めた『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』では、『有期労働契約が1回以上更新され、かつ1年を超えて勤務している有期契約労働者の契約を更新する場合は、契約の実態および労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければならない』としています。

やむを得ず雇い止めを行う際のルールとは

企業には、経営悪化などで、やむを得ず人員を削減しなければならない時もあります。
こうしたケースで、やむを得ず雇い止めを行う場合も、先ほどの、厚生労働省による基準を守る必要があります。

同基準では、雇い止めを告知する際について、『有期労働契約が3回以上更新されている有期契約労働者か、もしくは1年を超えて継続勤務している有期契約労働者に対しては、少なくとも契約期間満了の30日前までに予告をしなければいけない』としています。
また、有期契約労働者の求めに応じて、雇止めの理由について書かれた証明書を遅滞なく交付しなければいけません。

さらに、有期労働契約を結ぶ際にも、契約更新の有無や判断基準を契約書に記す必要があります。
この更新の有無や判断基準が記載されていないと、いざ雇い止めを行う際に、労使トラブルに発展する可能性があるので、注意しましょう。

『無期転換ルール』について知っておく

企業側はできる限り雇用の安定に配慮する必要があり、有期契約労働者に対する雇用継続の手段を探っていかなければいけません。

近年では、労働契約法が改正され、『無期転換ルール』が定められました。
これは、有期労働契約が5年を超えて更新された場合は、有期契約労働者の申し入れによって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるというルールのことです。

現在、多くの有期契約労働者が通算5年を超えて有期労働契約を更新しているとする調査結果もあり、国は、有期契約労働者が安定的に働ける環境の整備を進めています。
そもそも有期契約は、従事する業務が短期間で終わる可能性があるために締結するものです。

労働者が長く定着してくれることは、企業にとっても喜ばしいことです。
もし、有期契約労働者を継続的に雇用する意思があれば、5年を待たずに無期転換を行うことを検討してもよいかもしれません。

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