攻めるなら一極集中?密度の経済性について
街を歩いていると、こんな風に思ったことありませんか?
“この辺セブンイレブン多くない?“
“道挟んで両側にローソンあるやん!“
私も以前、このような状況に疑問を抱いていました。
“こんなことしたらお客さんを取り合うだけじゃないか。コンビニの人、頭悪いんかな。”
なんて思ったものです。
後に、頭が悪かったのは私の方だと知りました。
コンビニ各社がとっているこの戦略は、「密度の経済性」というものを活用したもので、非常に基本的な戦略のひとつです。
今回は小売業などが学ぶべき、「密度の経済性」について解説をしたいと思います。
密度の経済性とは
密度の経済性とは、
1つの地域に店舗や流通センターを集中配置することで物流や広告などのコストを削減できること
です。
特に小売りや運送などのサービス業で活用できると言われています。
小売業が多店舗展開を行う際、広くいろんな地域に出た方が良さそうな気がしてしまいますが、これでは効率が悪いのです。
1号店を東京に出店し、2号店を大阪、3号店を博多・・・という風に出店をした場合、
もともと関東に配送拠点を構えているため、ここからわざわざ西日本へ運ぶか、もしくは各地に新たな配送拠点を作らなければなりません。
また、広告を出すにも、各ローカル局でCMを流したり、地域ごとに新聞広告を出したり、非常に手間とコストがかかります。
一方、各店舗が近くにあれば、配送は一度で済むし、広告も同じ地域向けにひとつ出せばいい。
非常に効率がいいのです。
聞いてみれば当たり前の話ですね。
話は少し逸れますが、よく似た言葉に、「規模の経済性」「範囲の経済性」というものがあります。
規模の経済性は、
“大量に作って売れば売るほど、ひとつあたりのコストが削減されるよ”
という主に製造業向けの戦略です。
ユニクロは同じものを大量に生産できるので、あれだけ品質のいいものがあんなに安く手に入ります。
一方、範囲の経済性は、
“取り扱う商品数が増えれば増えるほど、商品間で材料などの転用が効くからコスパが良くなるよ”
という戦略で、いわゆる「シナジー効果」です。
富士フィルムが化粧品事業に力を入れたのも、もともと写真やフィルムで培った「コラーゲン」「抗酸化」「ナノテクノロジー」という活かせる技術があったからです。
いずれも事業を拡大していく際に、頭に入れておいた方が良い考え方なので、是非覚えておいてください。
活用方法
話を戻しまして、範囲の経済の活用例を見てみたいと思います。
最もメジャーなのが、セブンイレブンの戦略です。
セブンイレブンが店舗展開する際には、特定の地域に一気に出店を行います。
こうすることで、先ほど述べた密度の経済性のメリットである、”仕入における物流コストの削減” が図れることはもちろん、
店舗管理者の時間効率性が増し、さらには店舗展開同士の競争意識を生ませることもできます。
また、一気に店舗が増えることで、その地域での市場占有率が増え、プチ独占状態にもっていくことができます。
これを「ドミナント方式」「ドミナント戦略」などと呼びます。
もうひとつ例を挙げると、スターバックスも同様の戦略をとっています。
集中的な出店によって、特定のエリアにおけるカフェの中では最も優位な位置を獲得しています。
たとえば、東京都新宿区だけですでに30店舗超あるそうです(2020年8月現在)。
一方、ニュースにもなりましたが、鳥取県は2015年まで店舗がひとつのなかったことで有名です。
これは、スターバックスの徹底したドミナント戦略によるものと言えるでしょう。
カニバリゼーションに注意
ここまでは、集中的に店舗展開をすることのメリットを中心に述べえてきましたが、もちろん良い面ばかりではありません。
近くに同じ店を置くことで、双方のお客さんを取り合ってしまう、「カニバリゼーション」が起こってしまう可能性があります。
いわゆる、”共食い” です。
若かりし僕が懸念したことは、あながち間違ってはいませんでした。
密度の経済性が働く範囲内で、カニバらない(カニバリゼーションを起こさない)距離感、
実際には非常に難しいですが、そうやって利益が最大化する立地やサービスを選ぶ必要があります。
経済性だけがすべてじゃない
また、密度の経済性というのは、あくまで戦略を立てるうえでの考え方のひとつです。
戦略は、会社の理念やミッションを実現するためにあります。
いくら密度の経済性が良く働くからと言って、ミッションに沿わない戦略をとるべきではありません。
目指すべきゴールから逆算した今に、どう範囲の経済性というものが活かせるか、考えてみましょう、
あなたのビジョンを叶えるために、この考え方が少しでも役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。