社員イベント代は「福利厚生費」?それとも「交際費」?

コラム
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社員の労をねぎらうための「決起集会」や「感謝パーティー」「社内イベント」

経営者のみなさまとしては、社員のモチベーションアップや社内エンゲージメントを高めるために大切にしたい機会ですよね。

しかし、税務調査でよく揉めるテーマのひとつが、「このイベント費用、本当に福利厚生費でいいの?(交際費じゃないの?)」という点です。

交際費と判定されてしまうと、損金(経費)に落とせる金額に制限がかかり、追加の税金が発生してしまうリスクがあります。

今回は、過去に大きな話題となった注目すべき裁判例(福岡地裁 平成29年4月25日判決)をベースに、福利厚生費として認められるための「実務上のボーダーライン」をわかりやすく解説します。

1. 裁判で争われた「感謝の集い」の実態

まずは、実際に裁判となった企業の規模やイベントの概要を見てみましょう。

  • 会社規模:九州を中心に展開する大手養鶏・食肉販売会社(年商500億円超、従業員数約1,200名)
  • 問題となった費用:5年間にわたり開催された「感謝の集い」の費用(数千万円規模)
  • イベントの内容:高級ホテルでのコース料理、プロの歌手や演奏家によるコンサート、参加者への記念品支給など
  • 1人あたりの費用:約21,000円〜28,000円
  • 参加率:全従業員の70%以上(下請業者の参加者等も一部含む)

会社側は、社内従業員分を「福利厚生費」、社外の下請業者分などを「交際費」にしっかり区分して申告していました。
しかし税務署は、「ホテルで高級コース料理を振る舞い、1人2万円〜3万円もかけているのは豪華すぎる。全額が交際費(または寄付金等)にあたる」として、数千万円単位の追徴課税(否認)を行ってきたのです。

2. 裁判所の判断は「福利厚生費として認める」!

「1人3万円近くかかるイベントは、高額すぎて福利厚生費じゃない」と主張する税務署に対し、裁判所が下した結論は「福利厚生費で問題なし(納税者の勝ち)」というものでした。

国税側も控訴せず、この判決が確定しています。

なぜ、1人あたり2万円〜3万円という一見高額に見える社内イベント代が「福利厚生費」として認められたのでしょうか。ポイントは以下の3点にあります。

ポイント①:イベント開催に至る「背景と目的」

この会社はもともと約48億円もの累積赤字を抱え、倒産寸前の状態でした。

そこから社長と社員が一丸となって改革を進め、全社黒字化を達成。

「社員に感謝を伝え、今後のモチベーションをさらに高めたい」という明確で正当な目的がありました。

ポイント②:「日帰り慰安旅行」と同等の実態

工場をストップできず、また女性社員が多く泊まりがけが難しいという事情から、九州各地から往復3〜6時間かけて宮崎の会場へ送迎バスで移動する形態をとっていました。

裁判所は「一般的な一泊二日の社員旅行に代わる『日帰り慰安旅行』として考えれば、1人3万円程度は社会通念上、常識の範囲内である」と判断したのです。

ポイント③:全社的な機会の均等

一部の幹部だけでなく、パートや一般社員を含めた従業員全体に広く参加の機会が与えられており(参加率70%以上)、実質的に「全社的な福利厚生施策」として機能していたことが評価されました。

3. 福利厚生費として認めてもらうための3つの条件

一般的に、1人あたりの飲食・イベント費用が数万円規模になると、税務調査では「交際費」として疑われやすくなります。

今回の裁判例から学べる、社内イベント費用を正しく「福利厚生費」として落とすための条件は以下の3点です。

  1. 全員に機会が平等に開かれているか(全社員対象)
    特定のエグゼクティブや一部の部署だけを優遇するイベントではなく、全社員が参加できる機会になっていることが大前提です。
  2. 金額が「社会通念上、一般的な範囲」におさまっているか
    単に「飲食をした」だけだと高額に見えますが、「社内旅行の代わり」「全社的な記念行事」といった合理的理由があれば、1人2万円〜3万円程度でも妥当性が認められるケースがあります。
  3. 目的や経緯のストーリーが説明できるか
    「なぜそのイベントを開催したのか」「なぜその金額になったのか」を社内規程や企画書、議事録などの書類として残しておくことが極めて重要です。

4. まとめ:企画段階からの準備が会社を守ります

社員の労をねぎらうための素晴らしいイベントが、後から税務調査で「交際費だから税金を払ってください」と言われてしまったら悲しいですよね。

金額の多寡だけで一概にダメと決まるわけではなく、「開催の目的」「機会の均等性」「実務上の工夫や背景」が揃っていれば、福利厚生費として正々堂々と主張することが可能でしょう。

「今度企画している社内イベント、福利厚生費で落ちるかな?」「交際費との線引きに迷っている」という経営者さまは、企画を走らせる前にぜひ一度私たちにご相談ください!

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