その売掛金、本当にいつでも経費にできますか?貸倒損失の正しい手続きと落とし穴

コラム
著者

こんにちは。
フリーランスやスタートアップ、中小企業の社長さんとお話ししていると、決算書の中でよく見かける「あるお悩み」があります。

それは、「何年も回収できていない、実質あきらめている売掛金(債権)がそのまま残っている」という状態です。

「あのお金、もう返ってこないし、そろそろ税金上のロス(経費)として処理したいな」と思ったことはありませんか。
実はこれ、やり方を一歩間違えると、税務調査で手痛い指摘を受けてしまう代表的なポイントなのです。

今回は、最もメジャーな「貸倒損失(かしだおれそんしつ)」の計上方法について、分かりやすく解説します。

  1. 大きな勘違い

「いつでも経費にできる」は大きな勘違いよくある誤解として、以前の税理士さんなどから「『債権放棄の通知書』を送りさえすれば、いつでも好きなタイミングで経費(貸倒損失)に落とせますよ」と言われ、そのまま放置してしまっているケースがあります。

結論から申し上げますと、これは正しくありません。

税務上のルールは非常に厳格です。

貸倒損失として認められるのは、あくまでも「全額が回収できないことが明らかになった事業年度【だけ】」と決められています。

■ 過去の裁判(国税不服審判所)の実例

このように、タイミングを逃してしまうと、二度と経費にできなくなってしまうリスクがあります。

  1. 正しい「債権放棄」のプロセス

それでは、最も一般的な「債権放棄をして経費にする」ための正しいステップを見ていきましょう。

ただ書類を送ればいいわけではなく、そこに至るまでの「ストーリー」が大切になります。

やるだけの回収努力は尽くしたかまずは、相手の会社が「もう何ヶ月(何年)も債務超過(赤字続きで財産がない)で、どうやっても支払いができない状態」であることが前提です。

「何度も催促し、手を尽くしたけれど、本当に回収が無理だった」という、客観的な回収努力のプロセスが絶対に必要になります。

実務上、このプロセス(証拠)が抜けてしまっている会社が非常に多いのが現状です。

「期末まで」に内容証明郵便が届くこと「これ以上の請求はしません」という通知を相手に送るのですが、これは自社の決算期末までに相手に届いている必要があります。

ポイントは、必ず「内容証明郵便」(または配達証明付き)で送ること。

普通の郵便では、税務署から「本当に届いたのか、いつ届いたのか」と聞かれたときに証拠が出せなくなってしまいます。

  1. 相手が行方不明の場合の対処法

「そもそも相手と連絡がつかないし、どこにいるか分からない」という場合も諦める必要はありません。
実務上は以下のようなルートをたどります。

  • ステップ①:住民票を取得してみる 法人の権利を守る(債権回収や処理の)ためという正当な理由があれば、役所で相手方の住民票を取得することができます。まずは現住所を突き止める努力をします。
  • ステップ②:それでもダメなら「公示(こうじ)」を利用する どうしても所在が分からない場合は、法律(民法第98条)の規定を利用します。裁判所の掲示板などに張り出す「公示による意思表示」という手続きを行い、2週間が経過すると、相手に通知が届いたとみなされるルールがあります。

これらを経て、ようやく「法律上、債権が消滅した」と言えるようになり、貸倒損失としての計上が可能になります。

まとめ

立証責任は「あなたの会社」にあります手続きのお話を細かく解説しましたが、大切なのは以下の流れです。

❌ 「内容証明を送りさえすれば、いつでも経費にできる」

「回収しようと手を尽くしたけれどダメだった。だから最終手段として債権放棄をした」

実は、税務調査のときに「この貸倒損失は本当に正しい手続きを踏んだものか」を証明する責任(立証責任)は、税務署ではなく、納税者である会社側にあります。

「なぜこの時期に処理したのか」「どんな回収努力をしてきたのか」というストーリーと証拠を用意しておかないと、税務調査で指摘されたときに反論できず、追徴課税を受けてしまうことになりかねません。

「うちの決算書に載っているあの債権、そろそろ整理したいな」と思ったら、まずは書類を作って送る前に、ぜひ一度弊社のグループ会社であるsync税理士法人へご相談ください。

この記事の監修者