役員退職金はいくらまでOK?

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こんにちは。

会社の業績が順調で、長年頑張ってくれた社長や役員が退職する際、これまでの功績に報いるためにまとまった「役員退職金」を支給したいと考える経営者さまは多いと思います。

しかし、役員退職金で常に付きまとうのが「税務調査で『高すぎる(過大だ)』と指摘されて経費(損金)を否認されないか?」という不安です。

実務上よく聞く「功績倍率は3.0倍までなら安全」という噂は、本当なのでしょうか。

今回は、裁判例や国税不服審判所の裁決事例をひもときながら、税務調査で狙われやすいラインと「役員退職金の適正額」に関するリアルの考え方を解説します。

1. 税務署が計算する「過大額」の基本的な公式

税務調査において、役員退職金が適正かどうかを税務署がチェックする際、基本的には以下の計算式(平均功績倍率法)が用いられます。

【税務署が用いる適正額の標準式】適正額 = 適正な最終報酬月額 × 在任年数(1年未満切り上げ) × 同業他社の平均功績倍率

※「同業他社」とは、自社と事業内容や売上規模(一般的に売上高が0.5倍〜2倍程度の範囲)が類似している会社を税務署がデータベースから抽出したものを指します。

支給額が「1億円」を超えるとリスクが一気に上がる

退職金の総額が数千万円程度(たとえば2,000万円〜5,000万円など)であれば、極端な計算をしていない限り、税務調査で否認されるリスクはそれほど高くありません。

しかし、支給総額が「1億円」を超えてくると、税務署のチェックの目は一気に厳しくなります。 数億円単位の退職金になる場合は、最初から税務リスクを相当意識した設計が必要です。

実際に、1億1,200万円の役員退職金を支給した会社に対し、税務署の計算に基づき約6,370万円まで適正額を削られ、差額を否認された判例(大分地裁 平成20年12月1日判決)なども存在します。

2. 「功績倍率3.0倍なら絶対安全」という神話の嘘

実務でよく使われる「功績倍率3.0〜3.5倍」という数字ですが、「3.0倍でおさめておけば100%否認されない」というのは、残念ながら都市伝説(安全神話)に過ぎません。

実際の不服審判所の裁決(令和3年8月4日)を見てみましょう。

【3億円超の適正額が認められた事例】
国税不服審判所は、同業他社(A社・B社・C社)のデータから弾き出した「平均功績倍率2.04倍」を適用し、**「最終報酬月額500万円 × 30年 × 2.04 = 3億600万円」**を適正額と認定しました。

この事例では、3億円を超える高額な退職金自体は適正と認められましたが、ポイントは「税務署側が適用した平均倍率は2.04倍だった」という点です。

もしこの会社が「3.0倍や3.5倍」で計算して4億5,000万円〜5億2,500万円もの退職金を出していた場合、2.04倍で計算した3億600万円を超える部分はすべて「不相当に高額(過大)」として否認されていたことになります。

また、別の裁決(平成19年11月15日)では、会社側が「倍率3.6倍」で計算して支給したのに対し、審判所は「同業他社の実態から見て1.9倍が妥当」と判断し、大部分を否認したケースもあります。

つまり、「3.0倍」というのはあくまで目安であり、税務署が秘密裏に持っている「同業他社のデータ」次第で、安全圏の倍率は2.0倍近くまで下がる可能性があるということです。

3. 「最終報酬月額」を直前に跳ね上げるリスク

退職金の計算において、もうひとつ非常に危険なのが「退職の直前数年間で、役員報酬を急激に上げること」です。

退職金の額を増やす目的で、退職の直前に急に報酬を増やしたり、過去最高額の報酬月額を採用したりして計算すると、税務調査で「その最終月額自体が不適正である」と判断され、直前の増額分を無効化された上で再計算されるリスクが高まります。

  • 危険なパターン
    業績の裏付けがないのに、退職直前だけ役員報酬を2倍に引き上げて退職金を計算した。
  • 認められやすいパターン
    会社の業績拡大や相応の貢献度に合わせて、数年かけて段階的に報酬が改定されていた。

4. まとめ:役員退職金の「絶対安全な基準」は存在しない

役員退職金の適正額について、結論を言えば「ここまでなら100%否認されないという絶対的な基準値は存在しない」というのが税務の現実です。なぜなら、税務署が比較対象として抽出する「同業他社のデータ」は、事前に外部から閲覧することができないからです。

ですが、不当な否認を防ぐために会社側でできる防衛策はしっかりと存在します。

  1. 退職前の役員報酬を不自然に変動させない
  2. 功労金加算などの安易な上乗せは慎重に行う
  3. 同業他社の規模や自社の貢献度を考慮し、論理的な支給基準(役員退職慰労金規程)を整備しておく

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