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コラム

2021年KUMAマガジンより抜粋

芸術起業論 (幻冬舎文庫) (著)村上隆
https://www.amazon.co.jp/dp/B07KWT51K6/ref=cm_sw_r_cp_api_glt_H8JYMS967HGKJ6NR98PT

アートとビジネス。
これら、一見相容れない2つの関係について、「なるほど!」という発見がたくさんある本です。

村上隆さんというアーティストが書かれました。
この「お花」の作品は目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

村上さんは、サブカルチャーだったオタク文化を美術の世界に持ち込み、日本初の等身大フィギュアを作ったり、ルイ・ヴィトンやドラえもんとコラボしたりなど、
新しい価値観を臆せず提案され続けている現代美術家です。

本書では、そんな村上さんの芸術に対する考え方がたくさん書かれています。

村上さんと言えば、その作品が海外で評価され、オークションで1億円の値段が付いたことで有名です。
これは偶然ではなく、キチンと戦略を練った結果であることが本書を読めばよく分かります。

まず、彼はアートの世界の構造を徹底的に分析することから始めます。
アーティストって感覚とセンスで作品作りするんでしょ?と思いがちですが、そうではないのです。

本書の中でもこうおっしゃっています。
“勉強や訓練や分析や実行や検証を重ねてゆき、ルールをふまえた他人との競争の中で最高の芸を見せてゆくのが、アーティストという存在なのです”

このことを示す良い例として、
村上さんが芸術で「世界」に挑戦したときのお話が非常にわかりやすいのでご紹介しますね。

まず欧米と日本とでは、アートに対する価値観が全く異なります。
欧米ではアートに【ロジック】が重要視されるのに対し、日本でアートは【感覚的】なものとして捉えられています。

これを踏まえ、当時まだそれほど有名でなかった村上さんは、まず欧米の芸術の世界で認められることから始めます。
そこには、認められるためのロジックやルールが存在するからです。

そして、「欧米で認められた」という看板を引っ提げて日本に戻ってきます。
日本人は、”世界が評価している”という評判や雰囲気を比較的重視するので、世界での実績があると日本でも注目されるようになります。
この段階に来てやっと、彼は自分の好きな、作りたい作品を世に出すのです。

するともう作品を見てもらえる、話を聞いてもらえる土壌が整っていますので、今度は彼自身の理論や世界観も含め、改めて世界が評価しはじめます。
こうやって1億円の落札に至ったというわけですね。

本当に素晴らしい芸術家であり、戦略家だなあと思います。

僕たちはついつい、自分の言いたいことや、やりたいことを先に出してしまいますが、それが逆に遠回りになってしまうこともあるのかもしれません。

今自分が与えられた環境をしっかり観察・分析し、ルールを理解した上で、まずはそこで頑張る。
そして、その環境で実績が出たタイミングで、本当に自分がやりたいことをやる。

これが意外と近道なのかもしれませんね。個人的には耳の痛い話でした。

【顧客_氏名(漢字)】さんも是非ご自身の活動に活かせることがないか考えてみてください。

あと余談ですが、日本と欧米ではアートに対する価値観の差が税金にも出ているようで、
例えば、日本で美術品を買うと固定資産として税金徴収の対象になりますが、アメリカでは税金控除の対象になるそうです。
だから欧米では芸術作品がさかんに売買されるのですね。

こんな豆知識も手に入ります。

ぜひ読んでみてください!