彼を知り己を知れば百戦殆うからず

コラム

今回もタイトルは名言を引っ張ってきました。

何千年も前に書かれた兵法書に出てくる言葉が今のこの時代にも通じるというのは何とも不思議な感覚です。

彼(競合相手やお客さんの情報)を知るのも大事ですが、己(自社の状況)もよく知っておきましょうということで、前回のブログに引き続き経営指標について見ていきたいと思います。

安全性の指標

今回の安全性の指標は、借入の返済や設備投資など、企業の支払い能力を測るための指標です。

安全性の指標が悪い企業は、支払い能力が低いと判断することができるため、倒産する可能性もあります。

つまり、安全性の指標は企業の倒産リスクを表す指標と言えます。

流動比率

流動比率は、流動負債に対する流動資産の割合を示した指標です。

流動資産とは1年以内に回収される予定の資産のことを言い、流動負債とは1年以内に支払いの期限が到来する債務のことを言います。

そのため、この流動比率は会社の短期的な支払い能力を示す指標と言えます。

流動比率は以下の式で求めることができます。

「流動比率=流動資産/流動負債×100」

流動比率が高ければ支払い能力が高いと判断することができ、流動比率は200%あれば理想的と言われています。

当座比率

当座比率は、当座資産と流動負債の金額から企業の短期的な支払能力を判断する指標です。

当座資産とは、流動資産の中でも短期的に現金化することができる資産のことを言います。
例えば、現金・預金、受取手形、売掛金のことを指します。

流動比率同様に、会社の短期的な支払い能力を示す指標ですが、流動比率よりもさらに短期的な支払い能力を確認することができます。

当座比率は以下の式で求めることができます。

「当座比率=当座資産/流動負債×100」

当座比率が高ければ会社の支払い能力が高いと判断することができ、100%以上を保っていることが一般的には望ましいといわれています。

固定比率

固定比率は、自己資本に対する固定資産の比率を示す指標です。

本社や工場、社用車などの固定資産が返済義務のない自己資本でどれだけ賄われているかを確認することができる指標です。

固定資産はコストも固定化され、さらに長期間固定されることも多いため、自己資産で負担することが望ましいとされています。

固定資産は次の式で求めることができます。

「固定比率 =固定資産/自己資本×100」

固定比率が高いと、自己資本ではなく借入金など他人の資本で固定資産を賄っているため、他人の資本に依存してしまっており、資金繰りの面でリスクを抱えることとなります。

例えば、短期借入金で固定資産に投資をした場合は、固定資産から得られる利益を回収する前に借入金の返済期限が到来してしまう可能性があり、その場合には、資金繰りが上手く行かず、最悪の場合倒産に追い込まれてしまう可能性があるので注意が必要です。

固定長期適合比率

固定長期適合率は、固定資産に投資した資金が長期資金でどれだけまかなわれているかを見るための指標です。

固定長期適合率を確認することで、その投資によって資金繰りが悪化しないかどうかを把握することができます。

収益を生むまでに時間を要する固定資産への投資は、返済期間の長い固定負債と返済期間のない自己資本とで賄うことで資金繰りを悪化を防ぐことができます。

固定長期適合率は次の式で求めることができます。

「固定長期適合率=固定資産/(自己資本+固定負債)×100」

固定長期適合率が100%より低ければ、固定資産への投資を固定負債と自己資本で賄えていることになり、会社の財務状況は安全であると判断する要素の一つとなります。

自己資本比率

自己資本比率は、総資本に対して自己資本が占める割合を示す指標です。

資本は自己資本と他人資本とに分けられ、自己資本が占める割合が多いと負債である他人資本が少ないと判断することができます。

自己資本比率は次の式で求めることができます。

「自己資本比率=自己資本/総資本×100」

自己資本比率は、70%以上が理想と一般的にはされています。

まとめ

利益が出ているのに資金繰りがうまくいかず黒字倒産をする会社もあります。

倒産をした会社のすべてが安全性の指標に問題があったかどうかは分かりませんが、自分の会社がそうならないように経営者の方は自分の会社の安全性の指標のチェックと目標水準を持っておく方がいいと思います。

リスクを恐れて何も投資をしない経営をしていてはこのご時世生き残っていくことは難しいかと思いますが、自分の会社の財政状態をよく把握しないで勝負に出るのは無謀な挑戦と言わざるを得ません。

「彼を知り己を知れば百戦殆からず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。 彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し」

タイトルにした言葉にはこのような続きがあってそれを現代語に訳すと「敵の実情と味方の実情を熟知していれば、百回戦っても負ける心配はない。敵の実情を知らず、味方のことだけを知っている状態では、勝つこともあるが負けることもある。そして敵のことも味方のことも知らなければ、必ず負けてしまうだろう。」

経営の戦略を練るには外部調査だけではなく、自分の会社のこともよく知って戦いに臨みましょう。

KUMA Partners.,Ltd.ではこういった経営指標を用いた経営のお手伝いも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

最後までお読みいただきありがとうございます。