役員報酬を下げすぎると危険?「役員貸付金」が税務調査で役員賞与(脱税)と疑われる理由

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会社の業績が厳しいときや、銀行対策で赤字を出したくないとき、「とりあえず社長の役員報酬を月額10万円くらいまで下げておこう」と判断される経営者さまは少なくありません。

しかし、生活費すらまかなえないほど極端に役員報酬を低く設定してしまうと、別の大きな税務リスクを引き起こすことになります。それが「役員貸付金(会社から社長個人への貸付)」の問題です。

役員報酬が少ないため、生活費を補う目的で会社から個人へお金を出し入れし、その結果として「役員貸付金」がどんどん膨らんでいく…。

実はこれ、税務調査で調査官から「これは貸付金ではなく、実質的な役員賞与(給与)です」と指摘され、手痛い追徴課税を受けてしまうケースが増加しているのです。

今回は、役員貸付金がなぜ税務調査で狙われるのか、その理由と会社を守るための対策を分かりやすく解説します。

1. 実際にあった税務調査での厳しい指摘

まずは、実際の現場で起きたご相談事例をご紹介します。

【実際にあったご相談事例】

  • 社長の役員報酬をかなり低額に設定していた。
  • 足りない生活費のために会社から出金しており、役員貸付金の残高が年々増加。
  • 税法上の適正利息を設定し、未収利息も計上していた。
  • しかし、会社と社長の間で「金銭消費貸借契約書」は交わしていなかった。

この状況に対し、税務調査官は「返済も行われておらず、残高が増え続けている。実態は貸付ではなく、社長への役員賞与(損金にならない給与)である」と主張し、修正申告を求めてきました。

会社側からすれば「利息も計算して貸付金として処理しているのに、なぜ賞与扱いになるのか」と納得がいかない部分ですよね。

2. なぜ調査官は「役員賞与」だと主張するのか?

本来、会社が社長にお金を貸すこと自体は違法ではありません。資金の使い道が生活費であったとしても、借金(貸付金)であることには変わりないのが原則です。

しかし、税務調査官が「これは貸付金ではなく役員賞与だ」と疑うのには、以下の実務的な背景があります。

  • 契約書が存在しない
    銀行からお金を借りる時は必ず契約書を交わしますが、自社と社長個人の間では書面を作っていないケースがほとんどです。
  • 返済の実績がなく、残高が増え続けている
    「返すと言いながら、一向に返さず増える一方」であれば、税務署から見れば「返すつもりがない(=最初からあげたお金)」と受け取られても無理はありません。

会社と社長個人は「右手と左手」のように資金が行き来しやすいため、客観的な証拠(契約書や返済実績)がないと、税務署から「実質的に会社のお金を個人的にプレゼント(経済的利益の供与)したのと同じだ」と認定されてしまうのです。

3. 役員貸付金で修正申告に応じる必要はあるか?

法律や判例のロジックから言えば、会社のお金(売上など)を社長が横領・隠蔽したわけではなく、単に帳簿上で「貸付金」として処理しているのであれば、即座に役員賞与とされる筋合いはありません。本来は毅然と反論できるポイントです。

しかし、「契約書がない」「返済の実績がまったくない」という状態では、裁判や不服申し立てになった際に「本当に貸し借りだったのか」という事実認定で会社側が圧倒的に不利になってしまいます。

口頭で「返すつもりだった」と主張するだけでは、税務署を納得させることは極めて難しいのが現実です。

4. 今すぐできる!役員貸付金の税務調査対策

役員貸付金の残高が大きく、すぐに全額返済するのが難しい場合は、今すぐ以下の対策を実施してください。

対策①:最低限「金銭消費貸借契約書」を作成する

会社と社長個人の間で、金銭消費貸借契約書(借用書)を必ず作成してください。借入額、返済期日、返済方法、適用金利(税法上の適正利率)を明確に記載し、公的な契約として成立させます。

対策②:少額でも毎月「返済の実績」を作る

「返済義務を果たしている」という実績作りが最も強力な防御策になります。例えば、毎月の役員報酬から1万円でも2万円でも口座引き落とし(天引き)で会社へ返済する仕組みを作り、通帳に履歴を残しておきましょう。

対策③:税法上の「適正利率」を設定して利息を取る

無利息でお金を貸すと、本来もらうべき利息分が「経済的利益の供与(給与)」とみなされて課税されます。国税庁が定める適正利率(基準割引率や貸出平均金利などに基づく利率)を正しく設定し、計上しておくことがマストです。

5. まとめ:無理な役員報酬の設定は見直しを

役員報酬を極端に低く設定することは、一見すると会社の利益を残す良い節税に見えるかもしれません。

しかし、そのシワ寄せとして「役員貸付金」が膨らんでしまっては、将来の税務調査で一気に追徴課税を受け、本末転倒な結果になってしまいます。

  • 生活に必要な最低限の役員報酬を正しく設定する
  • すでに残ってしまった貸付金は、契約書と返済実績で固める

この2つのステップを徹底し、税務調査が入っても慌てない体制を整えていきましょう。
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