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マーケティング活動で要注意!『文化の盗用』を避ける

特定の国や民族などの文化を、ほかの文化圏の人々が表層的に流用することを『文化の盗用』といいます。
海外ではSNSなどで文化の盗用に対する炎上が相次いでおり、当事者が謝罪に追い込まれることも少なくありません。
あまりなじみのなかった日本でも、グローバル化とともに文化の盗用という概念は広まりつつあります。
マーケティング活動で文化の盗用をしてしまうと、故意か否かにかかわらず、大きな批判を浴びる可能性があるため注意が必要です。
そこで今回は、海外の事例を交えながら、文化の盗用をしないためのポイントを解説します。

文化の盗用とされる行為とは?

『文化の盗用』は、「Cultural appropriation」という英語を和訳したものです。
「appropriation」は「私物化」といった意味を持つことから、「文化の私物化」と呼ばれることもあります。

ここでいう「文化」とは、特定の国や民族、人種や宗教などで使われている伝統・習慣・言語・芸術・衣服・歴史などのことです。
文化の盗用の代表例としてよくあげられるのが、ネイティブアメリカンの伝統的な衣服を、非ネイティブアメリカンがファッションとして着用することです。
また、黒人文化のなかで生まれたコーンロウやドレッドなどの髪型を非黒人が行うと、文化の盗用として指摘されるケースがあります。
たとえば、2016年には人気歌手のジャスティン・ビーバーがドレッドヘアにしたことで批判を浴びました。
また、2020年にはファッションブランドのコム デ ギャルソンが、ファッションショーで白人モデルにコーンロウのウィッグをつけさせて、文化の盗用であると非難されました。

文化の盗用に明確な定義はありませんが、一つに、文化を流用する側とされる側に経済的、もしくは文化的なパワーバランスがあることがあげられます。
ネイティブアメリカンや黒人に対する差別問題が背景にあるアメリカでは、白人が行う文化の盗用に厳しい目が向けられるという側面もあるのでしょう。

日本人が文化の盗用に敏感ではない理由

日本はこれまで「流用される側」になることが度々ありました。

2013年には、歌手のケイティ・ペリーがアメリカの音楽賞『アメリカン・ミュージック・アワード』にて、芸者風の衣装でパフォーマンスを繰り広げて批判を集めました。
また、2017年にはファッションモデルのカーリー・クロスが同じく芸者風の衣装で雑誌の撮影を行い、人種差別的と非難されました。

2019年には、タレントのキム・カーダシアンが自身の補正下着ブランドに『KIMONO』という名前をつけて、厳しく批判されています。
日本の着物と補正下着に関連はなく、表層的な流用が文化の盗用であると指摘されました。
結果的に、キム・カーダシアンはブランド名を撤回して、異なるものに変更しています。

ただし、これらの文化の盗用は日本国内において、そこまで大きな批判を集めることはありませんでした。
一般的に、マイノリティ(少数派)の文化をマジョリティ(多数派)が流用すると、文化の盗用が問題として取り沙汰されます。
日本に住む日本人は圧倒的なマジョリティに属しているため、マイノリティの訴える文化の盗用という概念が、実感を伴って理解しづらかったのが原因といわれています。

文化の盗用の問題点は、文化を流用された側の地位が向上するわけでも、利益が還元されるわけでもないところにあるでしょう。
自己の利益のために、異なる文化を表層的に流用する行為は、流用される側に「搾取された」という印象を強く与えます。
また、文化の盗用によって、流用された側の文化や存在が消えてしまう可能性があることも大きな懸念事項といえます。

正しくない文化の流用は、見た人に元となっている文化自体に間違った印象を与えてしまったり、ステレオタイプを助長したりすることにもなります。
誰しも、自分のアイデンティティとなっている文化を何者かに上書きされたくはないはずです。

それらをふまえたうえで、マーケティング活動で広告展開やキャンペーンなどを行う際に、注意すべきことがあります。
異なる文化圏のシンボルやアイコン、言語や衣服などを使用するのであれば、それらの文化的なルーツや意味をしっかりと調べ、その流用が文化の盗用にあたらないか、十分に検討することが重要です。

その際、イメージの向上や利益の分配などを含む、文化の還元について考えることも必要です。
可能であれば、文化の大本となる人たちに意見を求めるなどすると効果的です。

文化の盗用とリスペクトの線引きはとてもむずかしく、個々のケースで正しく判断しなければいけません。
手軽なアイコンとして異なる文化を表層的に使用するのではなく、その文化を尊重し、敬意を払うことが文化の盗用を防ぐことにつながります。

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