役員退職金の「適正額」はどう決まる?税務署が見ている本当のポイントと落とし穴

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会社の成長を支えてくれた役員が退任するときや、社長ご自身のリタイアを考える際、切っても切り離せないのが「役員退職金」の話題です。

経営者のみなさまからよく「月額報酬が〇〇万円で、在任期間が〇年、功績倍率を〇倍にしたら、税務署に怒られませんか?」といったご質問をいただきます。

実はこれ、計算式の数字だけを出されても「否認されるかどうか(税務調査でNGが出るか)」は一概に言えないのが本音です。

今回は、税務上で役員退職金の「経費にできる上限額(損金算入限度額)」がどのように判断されているのか、その本質的な考え方をわかりやすく整理して解説します。

1. 税務署が見ているのは「計算式」ではなく「支給総額」

実務では、役員退職金を計算する際に「最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率」という計算式(功績倍率法)を使うのが一般的です。

しかし、法人税法(法人税法施行令第70条第二号)の原則に立ち返ると、税務署がチェックしているのは計算式の細部ではありません。以下の3つの要素を総合的に考慮した「最終的な支給総額が、高すぎるかどうか」を見ています。

  1. 業務に従事した期間(どれくらい会社に貢献したか)
  2. 退職に至った事情(辞める理由や経緯)
  3. 同業他社(類似法人)の支給状況(同じ規模・業種の他社と比べてどうか)

表面上の計算合わせは危険

たとえば退職の直前に、節税目的で役員の役職を急に上げて最終月額報酬を跳ね上げたり、高い功績倍率を設定したりして、計算上だけ退職金を膨らませたとします。

形式上は計算式に当てはまっていても、同業他社やこれまでの貢献度に比べて「支給総額が不相当に高額である」と判断されれば、オーバーした分は経費(損金)として認められず、税務調査で否認されてしまうのです。

2. ウワサの「功労加算」は損金にしていいの?

役員退職金に「これまでの功績」を上乗せする「功労加算」(一般的に計算額の30%程度をプラスする方法)についても、よくご質問をいただきます。

これも結論から言うと、「功労加算をしたかどうか」ではなく「加算した後の合計額が適正範囲内におさまっているか」で判断されます。

  • 否認リスクが高いケース
    もともとの功績倍率が高く設定されているのに、さらに功労加算を乗せた結果、他社と比較して圧倒的に高額な退職金になってしまった場合。
  • 否認リスクが低いケース
    月額報酬が低めに抑えられていたため、功労加算をしても全体の支給額が業界水準から見て控えめな場合。

つまり、言葉や名目に惑わされることなく、「結果としていくら払ったのか」がすべての基準になります。

3. 「弔慰金」と「退職金」は別物!混ざると危険な理由

万が一、役員が亡くなられた際に支給する「弔慰金(ちょういきん)」は、通常の役員退職金とは明確に区別されます。そのため、原則として役員退職金の損金算入限度額の計算枠には含まれません。

相続税のルール(相続税基本通達3-20)では、税金がかからない弔慰金の上限目安として以下のように定められています。

  • 業務上の死亡:最終月額報酬の36ヶ月分以内
  • 業務外の死亡:最終月額報酬の6ヶ月分以内

ここでも「不相当に高額」ならアウト

「じゃあ月額報酬の6ヶ月分(または36ヶ月分)までなら絶対安全なんだね」と思いがちですが、ここにも注意が必要です。

同業他社の状況やその方の役職に照らして、月額報酬自体が極端に高額であるなど「弔慰金としても高すぎる」と判定された場合、オーバーした部分は弔慰金ではなく「役員退職金」として扱われます。

その結果、遺族側では相続税の対象(みなし相続財産)となり、会社側でも役員退職金の限度額を超えてしまい経費から落ちなくなる、というダブルパンチを受けるリスクがあるのです。

4. まとめ:役員退職金は「支給前の事前設計」が命です

役員退職金や弔慰金は、会社にとっても役員個人(ご家族)にとっても非常に大きな金額が動くイベントです。

だからこそ、「適当な倍率で計算して出しておけば大丈夫」と安易に判断するのではなく、同業他社の水準やこれまでの報酬バランスを分析し、「万が一税務調査で突っ込まれても、論理的に説明できる根拠」を事前に作っておくことが極めて重要になります。

弊社のグループ会社であるsync税理士法人では、事前のシミュレーションから適正額の算出、株主総会や取締役会での議事録作成のサポートまで、実務に即したご提案を行っております。

「将来の退職金、どれくらい出せるだろう?」「今の設定でリスクはないかな?」と気になった方は、ぜひお気軽に私たちにご相談ください。

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